4人死傷から7年、「開かずの踏切」高架化着工
東京都足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの踏切周辺で4日、高架化工事が始まった。
2005年に起きた4人死傷事故を受けた抜本的な対策が、事故から7年を経てようやくスタートする。
足立区は20年度までの完成を目指すが、遮断機の下りた状態が1時間のうち最大57分にもなる“開かずの踏切”とあって、地元住民は一日も早い完成を心待ちにしている。
4人死傷事故は05年3月15日夕に発生した。当時の遮断機は手動式で、東武鉄道の踏切保安係が、多くの通行人を通そうと、準急列車が接近していたにもかかわらず遮断機を上げ、踏切内に入った女性2人が死亡、ほか2人が重傷を負った。
現在、遮断機は自動化され、警備員の配置が進み、近くには歩道橋も完成した。ただ、この踏切には5本の線路が通るとあって、ラッシュ時には長時間 閉じたまま。都は04年、「開かずの踏切」20か所の立体化計画を打ち出したが、実現のめどが立たないことから、足立区は07年、自ら事業を行うことを決 定。都などとの調整を経て、今年ようやく着工にこぎつけた。
事故で母親の高橋俊枝さん(当時75歳)を亡くした横浜市の主婦、加山圭子さん(57)は「去年の震災もあり、工事が遅れるのではと思っていただけによかった」と安堵。「事故後、様々な対策を取ってもらったが、踏切はなくしてしまうのが一番の解決」と語る。
地元の期待も大きい。時計・メガネ店「太宝堂」3代目店長末武克仁さん(42)は、街の東西を分断する踏切を「まるでベルリンの壁」とたとえ、 「待つのが面倒で、子どもの頃から踏切の向こうにはあまり行かなかった。高架になれば、町の人も客も行き来しやすくなる」と期待を込める。
4日、踏切近くの中学校で開かれた起工式で、同区の近藤弥生区長は「痛ましい事故から7年7か月がたち、悲願ともいうべき工事に着手した。駅周辺の街づくりを通じて、地域の発展を目指したい」と話していた。
高架化の総事業費は約540億円。国の補助金や東武鉄道、都の負担を除くと、区の負担分は約110億円。都が事業主体になる場合に比べて数十億円 増えるが、区鉄道立体化担当課は「負担が増えても、出来るだけ早く高架化を実現したかった」と話す。負担増について区民からの苦情は届いていないという。